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2013年03月12日

TPP(環太平洋地域による経済連携協定)の参加について(パートⅣ最終回)

TPP(環太平洋地域による経済連携協定)の参加について(パートⅣ最終回)
 日本の食料自給率は2010年で39%(カロリーベース)でした。
先進国の中でも最も低く、食の安全・安心などの観点からも
自給率を上げる努力が求められています。
では、沖縄県の食料自給率はどうでしょうか。2010年が34%でした。
全国平均よりも低い数値でした。ちなみに隣りの鹿児島県は
89%の自給率を誇ります。沖縄県の場合は観光産業などのサービス業が多く、
台風被害で農業生産が低くなるのは容易に想像できますが、
深刻なのは沖縄での食料自給率の約7~8割がサトウキビで占めていることです。
少し前の県議会において「2005年の沖縄の自給率は30%。
サトウキビを除くと6%の自給率でしかない」と答弁されています。

【H20年 第2回 県議会答弁】
http://www2.pref.okinawa.jp/oki/Gikairep1.nsf/481e05e7edaca1db49256f540004c033/6ead184b8fcf5cdb492574c100164781?OpenDocument


■TPP参加でサトウキビ、牛、豚の畜産業が影響を受けます。
 もし仮にTPP交渉に参加し、例外品目が認めらずに関税無しで
輸入品が自由に入荷されると、沖縄の場合はサトウキビ産業は
壊滅的な影響を受け、また、牛肉や豚肉も70~75%の生産量が
減少すると報道されました。


【仲吉勝弘さん】
TPP(環太平洋地域による経済連携協定)の参加について(パートⅣ最終回)

■TPP交渉参加問題に負けない農業を目指して
 産直まるしぇの生産者仲吉良勝弘さんは40代。糸満の丘で鉄骨ハウスを
利用した農業を続けています。農業を始めた頃はランの栽培でした。
最初に施設補助金を利用しました。しかし、次第に生産費と売上金額が
合わなくなりました。
また、大型台風でビニールや鉄骨が壊れると百万円単位で修理をしました。
農業を続けるためにラン栽培を辞め、鉄骨ハウスを生かして
沖縄にあった農業を模索しました。たどり着いたのが、鉄骨ハウスの中で
ベット栽培(腰の高さのベッド台に10cm程度に土を乗せて育てる栽培)による
ワケギ、ニラ、ハンダマを栽培し安定的に出荷しています。

TPP(環太平洋地域による経済連携協定)の参加について(パートⅣ最終回)

TPP(環太平洋地域による経済連携協定)の参加について(パートⅣ最終回)

■TPP参加問題と農業現場でやれること
今回のTPP参加は特に離島のサトウキビ農家と畜産農家が大変な状況になります。
農業が続けられなくなる農家の少なくないと言われます。連鎖して、
地域の製糖工場を始め運送などの企業も厳しくなり、地域経済が衰退してゆきます。
 仲良さんは言います。「沖縄はサトウキビから他の作物に転換する必要があります。
県の一括交付金を利用しインドネシアからの農業研修者も受け入れ規模農業に挑戦しています。」

【編集雑感】

現在、TPP交渉参加の農業分野の問題は、直接的には農業者や農業団体、農業関連事業者に影響がでる問題ですが、 実際には消費者である市民にこそ、影響が出てくると思います。それは食の安全に対してです。関税無しで、安い農産物が大量に入ってきます。すると、国産の野菜や米、乳製品も安くしますが、採算が合わなくなり、生産や製造は海外にシフトします。現在、輸入農産物の残留検査や食品添加物基準の検査体制は、現在でも不十分で一部の食品しかサンプル的に行なっているのが現状です。過去にも、農産物の輸入自由化(オレンジ、牛肉、パイナップルなど)で国内生産量と産業は縮小してきました。米のミニマムアクセスは今も国内の米生産者を、減反という形で苦しめています。
そうして、今回の輸入関税が無くなると、国産農産物は多大な打撃を受け、生産量が縮小します。その影響は、やはり安全で安心な国産農産物を食べたいと思う市民にとって、稀少で高い国産品になってしまうのです。

今でこそ、2年前の原発事故で、食品の放射能汚染を心配する状況になっています。しかし、原発事故以前は、輸入農産物の残留農薬や輸入食品の基準外の添加物の検出などで、食の安全が問題視されていました。
中国産のホウレンソウ残留農薬問題などは、原発事故での被曝した食品のほうが「より怖い」との声を聞いたりします。放射能被爆の問題の前に、食品の残留農薬や添加物残留問題は今もあるのです。幼児児童のアトピーやアレルギーの問題、精子や卵子の減少による不妊、果ては乳児の奇形などは化学物質の摂取が疑われています。

先進国の中で最下位の食料自給率の低さは、今に始まった事ではありません。戦後から、食料政策は、アメリカの脱脂粉乳や学校給食のパン(小麦)などが米食に取って替わられてきました。食の欧米化と言われ、経済大国第2位まで成長した工業国の日本が、農村の若い働き手を都市や工業地域に吸い寄せられていきました。そして、現在、多くの農村地域を見渡せば過疎化が進み、地域を支える若い人々の雇用も産業も無いのが実情です。農業の担い手も少なくなっています。「海外にも通用する農産物ブランドを背景に魅力ある農業を育てる」と政府は言います。果たして、その選択は正しいのでしょうか?

少なくとも、戦後の先進国は、自国の食料自給を高めてきました。その上で、農産物を海外に輸出する戦略を持っています。数年前に、小麦や大豆などが世界的に不作になり、ロシア、アメリカ、フランス、オーストラリアなどの輸出国は、国外に農産物の出荷を制限しました。ロシアなどは一切出荷しませんでした。日本の小麦製品、大豆製品は高騰しました。今日でもじわりじわり高騰しています。

農産物の多くを、国外の輸入品に頼る現在の日本の姿があります。そして、アメリカ主導のTPP交渉に参加することで関税撤廃になってゆけば、ますます、国産農産物の減少と農家の担い手を困難にしてゆくのは明らかです。
中国、韓国とのFTAやASEAN+3でのアジア地域にて、日本の役割を果たすことが懸命だと考えています。





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Posted by 産直まるしぇ at 16:11│Comments(0)暮らし
 
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